集英社ビジネス書

試し読み
どんどん安くなるメガネの値段
いったい、原価はいくらなの!?


金子’S CHECK!
激安メガネの値段のカラクリ
メガネの製造原価は価格の2〜3割
人件費を徹底的に抑えて安値を実現



低価格化の背景にあるのは、メガネのファッションアイテム化

 さて、現在は「Zoff」に代表される、1万円以下の激安メガネチェーンが大盛況。実は私も愛用しておりまして、所有している40本近いメガネのほとんどが「JINS」と「OWNDAYS」製の激安メガネなんです。
 この2社に「Zoff」を加えた3チェーンが、いわゆる「激安メガネ新御三家」と言われています。各社とも5000円前後を最安値にし、1万円以下でスリープライス、もしくはフォープライスでの商品展開を行う“ツワモノ”たち。ほんの10年くらい前までは2〜3万円のメガネが当たり前だったことを考えると、非常に急激な価格破壊であると言えるでしょう。
 事実、眼鏡店の平均客単価はこの10年間で15%も減少。その最大の理由は、この「激安メガネ新御三家」の大躍進です。その証拠に、2009年度の3社合計の売上本数は約310万本。国内市場の6分の1に達する勢いです。既存業界への新規参入ということを考えると、このシェアの伸びは異常です。
 まずはなぜ、激安メガネの需要がここまで伸びているのかを探ってみましょう。最大の理由は、消費者のメガネに対する意識が変わったことが挙げられます。
かつて医療器具だったメガネですが、今では若者を中心に、アパレル的なアイテムとして認識されるようになっています。2005年には『メガネ男子』(アスペクト)という「メガネ男子名鑑」(!?)がベストセラーになるほど、現在ではファッションアイテムとして定着していますよね。
 「メガネはTPOに応じてかけ替えるもの」との認識が広まれば、1本のメガネにかけられる金額は、必然的に下がってくる。「メガネのかけ替えはファッション」というイメージ戦略で“市場創造型低価格化”に成功した好例と言えるでしょう。
 激安メガネの需要が伸びてきた理由はわかりました。それではそもそも、これまでの4分の1に近い「1本5000円前後」という低価格化が、なぜ可能だったのでしょうか。

SPA方式で原価を抑え
人件費なども徹底的に削減!


「新御三家」が激安価格を実現できる理由は、大きく分けて2つあります。
(1)SPA(製造型小売業)方式で製造原価を抑える
 まず言えるのは、メガネの原価率は皆さんの想像以上に低いということ。激安店に限らず、高級店でも原価率は20〜30%程度と言われています。
「JINS」を経営している株式会社ジェイアイエヌの公表している資料によると、原価率は28.2%。つまり4990円の商品ならば、約1407円が製造原価になります。内訳としては、海外製のレンズが2枚で450円、中国製のフレームが450円。それに組み立て費や輸送費を含めて、1200〜1400円と言ったところでしょう。
 価格が4倍近くする高級店と原価率が同じということは、原価は4分の1程度ということ。原価がそれだけ安く済む秘密としては、3社とも商品生産を外注せず、生産から販売までを一括で管理する手法を取っていること。これにより製造元利益や問屋のマージンがかからなくなり、輸送費なども削減できる。SPA方式と呼ばれるこの手法は、衣料品業界でユニクロなどが取っているシステムです。いわばこの3社は単なる“たとえ”のレベルを越えて、真に「メガネ業界のユニクロ」なのです。
 ちなみに本筋とは外れますが、大手店のメガネの製造は外部発注であり、その多くが福井県の鯖江市で生産されています。同市のメガネフレーム生産の国内シェアはなんと96%! 名実ともに“メガネの街”なのです。
(2)徹底的なコストの削減
 ある激安メガネチェーンの社長によると、メガネ1本あたりの販売コスト(原価以外)は、大手メガネ店の4分の1以下だそうです。その中でも徹底的に削減されているのは人件費であり、「JINS」の人件費が販売管理費(経費)の中に占める割合は38.9%。大手の「パリミキ」では52.0%であることを考えると、かなりの低さです。
 人件費削減の手段はいくつかあります。まずは接客時間の削減。大手で顧客一人あたりの接客時間が約1時間であるのに対し、激安店ではその3分の1の20分程度。さらに人件費のかかる視力測定やレンズ加工は、すべて最新設備で自動化しています。しかも各店舗に社員は1人程度で、残りはアルバイト。これも相当な人件費節約になります。  もうひとつ、大手がテレビCMには大物タレント(ヨンさまやベッキー、関根勤など)を使っているのに対して、一部を除き激安店ではタレントは使わない。経費中の広告宣伝費の割合を比較すると、大手の「パリミキ」で11%、激安店の「JINS」で4%になっています。この差も大きいでしょう。
 つまり激安店は「安い原価で製造し、人手や広告費をかけずに大量に売る」ことで、超低価格を実現しているということ。「JINS」の1店舗当たりの年間販売本数(21400本)は、なんと「メガネトップ」(3300本)の約6.5倍にもなるのです。薄利多売の原則を、忠実に守っているんですね。

市場規模は、実は縮小中。
生き残りをかけた戦いが続く


 ちなみにこの業界、実は市場自体は縮小傾向にあります。1人当たりのメガネ所有本数は増えたとはいえ、そのピークは2〜3年前のこと。価格の下落と不況による買い控えもあり、国内市場は2004年の5459億円から、2008年には4600億円に縮小。2009年はついに、4000億円を割ってしまっております。
 もちろん旧来「御三家」と言われていた「メガネトップ」、「パリミキ」、「メガネスーパー」にも、この低価格化・市場縮小の影響は確実に表れています。
「メガネトップ」が低価格ライン「眼鏡市場」を2006年に展開開始し、価格競争はますます激化。「パリミキ」は2009年度に100店近く閉店するなど、生き残り競争もさらに加速しています。しかし激安メガネチェーンは大幅に出展数を増加。市場規模の縮小を無視するかのような攻勢に出ています。
 これだけ市場全体が右肩下がりになっているようでは、たとえ飛ぶ鳥を落とす勢いの激安メガネ店といえど、安穏とはしていられません。むしろ2010年より新規100店舗の出店が決まっている「OWNDAYS」など「大丈夫か?」と不安になってしまうほど。価格ウォッチャーの私としては、この先の展開が楽しみな業界の一つですね。

金子の結論
SPA方式と徹底的な経費削減で
薄利多売方式の王道を爆走中!
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