第5回:木暮太一さん

好評発売中の最新刊で、借金まみれでお金に苦労した体験から編み出して人生をリセットした「お金のお片づけ」手帳術を初公開した野呂エイシロウさんが、ビジネス書ベストセラー作家や話題の著者と「お金」をテーマにした対談をスタートしました。毎回、お金に対するいろいろな哲学やノウハウが次々語られて、読めばあなたも「お金が貯まる」ヒントがきっと見つかります!今回のゲストは、『新版 今までで一番やさしい経済の教科書』、『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』などの話題の著書を次々に世に送り出している木暮太一さん。「経済」に強い木暮さんと野呂さんのトークは、「年収1000万円」の話題からはじまりました。

「年収1000万円」は誰もが目指したくなる目標。
でも実際に到達すると、思ったほど幸せではない。

野呂

 木暮さんのご著書『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』に、「年収1000万円になっても、僕たちには激務だけが残る」という章があり、衝撃的でした。たとえ年収1000万円を稼いでいようと、生活に余裕ができるとは限らない。1000万円あれば幸せになれるかというと、必ずしもそうではないんですね。


木暮

 年収の額だけに注目してもあまり意味がありません。1000万円を稼ぐためには、当然、労力も時間も必要経費もかかります。年収が増えても、労力が跳ね上がっていたら、結果、豊かな気持ちにはなれません。たとえば仕事をするために体を壊し、精神的に極度のストレスを抱えるような状況では、たとえ1000万円を稼いだとしても、疲れや不満ばかりが残ります。幸せとは言えません。


野呂

 「年収1000万円」というのは、いつからかひとつの指標になっています。よく「結婚相手に求める条件は年収1000万円以上であること」というセリフも聞かれます。それくらい「年収1000万円」って、ある種のステータスのようです。


木暮

 「年収1000万円」は、誰もが一度は目指したくなるひとつの目標なのかもしれません。とはいえ、実際にその目標にたどりついてみたらどうなるかというと、思っていたほど幸せではなかったりします。特に、サラリーマンで年収1000万円の人は、予想以上に厳しい生活をしているはずです。会社勤めで1000万円稼ぐとなると、必要経費もそのぶんかかるようになる。日々の疲れをとるために必要な精神的なケアにかかる経費も含めれば、当然、出費は多くなります。「おかしいなあ、こんなに稼いでいるのに、どうして足りないんだろう?」という人たちの多くは、そのあたりのことがよく把握できていないんです。


野呂

 僕もそのパターンでした。僕はバブル世代なのもあり、若いころから収入には恵まれていたんです。けれども、少しも生活は楽ではなかった。今回、『毎日○×チェックするだけ! なぜかお金が貯まる手帳術』に正直に書いたとおり、気づけば1000万円の借金を背負っていました。「こんなに働いているんだから、毎日バーで一杯やるくらい、いいだろう」「これだけ苦労して稼いでいるんだから、このくらいの値段のスーツを買ったっていいだろう」。僕はこんなふうに考えて、いつも浪費してたんですよね。バリバリ働いてお金は稼ぐんだけど、一方でストレスがたまってしまって、ムダにお金を使ってしまうんです。


年収1000万円以下でも暮らし方次第で豊かな気持ちで
生活することは可能。稼ぐ以上に苦労してはいけません。

木暮

 野呂さんはずいぶん、お酒にお金が消えたそうですもんね。


野呂

 そうなんですよ。キャバクラによく行っていましたから。でも、35歳でそういうことから完全に卒業しました。もう一切行きません。キャバクラ通いをすると、「稼いでいるのになぜか貧乏」という状態に簡単になってしまいますから。そういえば、ある本で読んだのですが、特に弁護士や医者、コンサルタントなどの業種で年収800~1000万円の人が実はいちばん「貧乏」だとか。なぜかというと、それくらいの年収があって、なおかつ社会的にステータスの高い職業についていると、それなりに身なりを整えたり、いい車に乗ったりしなくちゃいけない。お金が入ってきても、出ていく分が多いから、思いのほか「貧乏」になってしまう。貯金もできなくなる、というんです。


木暮

 収入が増えれば裕福になる、というのは単なる幻想ですからね。稼いでも稼いでも、いつまでも苦しいという状況は、今の日本ではありふれています。


野呂

 では、逆に年収が1000万円以下でも、豊かな気持ちで暮らすことは可能だと思いますか?


木暮

 暮らし方次第で可能です。企業では、売り上げからコストを引いたものが利益になります。その考えを個人にも当てはめてみるとわかりやすいです。個人の年収が1000万円でも、生活にかかるコストが高ければ利益は出ません。反対に、年収がたとえ100万円でも、生活コストが100万円以下に抑えられる人には、利益が出ます。生活コストは、今日生きていくための食事と住むところ、着るものについての費用が基本です。それを稼いだ額の中で納めていくことがまずは基本中の基本ですよね。野呂さんのご著書は、いかに出費をコントロールしていくかということがメインテーマなので、生活コストがかかりすぎているかもしれないと思っている人には、いいヒントがたくさんあると思います。


野呂

 ありがとうございます。ほかに、木暮さんが考える働き方のコツはありますか?


木暮

 「稼ぐ金額以上に苦労してはいけない」ということです。


野呂

 確かに、稼ぎが大きくても、へとへとになるまで苦労すると、嫌になってしまいますよね。精神的なダメージも大きい。


木暮

 そうなんです。ところが、みんなその点を考えずに仕事を選んでしまう。「年収1000万円」という謳い文句に惹かれて就職してみると、想定外に苛酷な労働条件が待っていた、ということもよくあります。たとえ年収が高くても、それに見合わない労力を払い、苦労した実感だけが大きいような働き方をしていたら、一生ラクにならないし、豊かな気持ちにはなれないでしょう。