集英社ビジネス書

試し読み

序 章
新人ならではの武器を知れ。

小宮謙一

あなたには「超一流」になる可能性がある

 初めに、この本を手に取ったあなたには、伝説を生み出すようなビジネスパーソンになる可能性が十分にあるということからお伝えしましょう。
 毎年何十万人もの若者が新たに社会に出て仕事を始めますが、若いうちから書籍を通して学ぼうとする人は残念ながらほんのわずかです。
 でも、あなたはこの本を手にしました。
 サブタイトルで謳っているように、この本は20代でチャンスをつかみ、突き抜けたい人のための本です。そこそこデキるというレベルでいいのなら、数多くある他の本でもよかったはずです。「超一流」を目指したい、「伝説の新人」と呼ばれるようになりたいと思ったからこそ、今こうしてこの本を読み始めているのだと思います。
 実は、その気持ちがあることが「伝説の新人」になるための最低条件であり、同時に最も重要な要素でもあるのです。これは教えて身につくものではありません。
 私はリクルートでもソフトバンクでも数多くのメンバーに接してきましたが、突き抜けるメンバーは皆、自ら学び、先輩たちのスキルを盗み、やがて大きな信頼を勝ち取って成功のスパイラルに乗っていきます。彼らに共通しているのは、自分を高めたいという気持ちが極めて高く、他の多くのメンバーとは向上心の次元が違うということです。

 あなたがこの本を手にしたのは、ここから何かを盗み獲ろうという向上心が引き起こした行動であり、この時点ですでに大きな可能性があるのは確かなのです。重要なのは、その気持ちを持ち続けることです。
 

若くして突き抜ける法則をいち早く学べ

 「ビジネスはゲーム。遊び方を知っていたら、世界最高のゲームである」。これは、「世界一偉大なセールスマン」と呼ばれたIBMの創業者トーマス・J・ワトソンの言葉です。
 新人時代は、ビジネスはゲームだと思えるような余裕はなかなかないと思いますが、この歴史的な「超一流」の成功者の言葉には学ぶべきヒントがあります。
 一つは、ワトソンが「遊び方を知っていたら」と表現したことです。これは、成功者はルールを知っているということです。「伝説の新人」を目指すのであればまずは成功にはルール(法則)があるということをしっかり認識し、自分のものにする決意をすることです。
 もう一つは、彼がビジネスを「世界最高のゲームである」と表現したことです。これは、どんな遊びよりもビジネスのほうが面白く、やりがいがあるということです。
 できないこと、苦しいことが次々と押し寄せてくる新人にとっては信じられない言葉かもしれませんが、「超一流」と呼ばれ、自分のやりたいことを次々と形にしている成功者にとっては違和感のないことなのです。
 まずは、ビジネスの「遊び方=ルール」を知ることです。新人時代に突き抜けるためには、新人時代に突き抜けるためのルールを知ることが重要なのです。これから章を追って「伝説の新人になるための10の違い」を解説していきます。それは「優秀」な新人になるための違いではなく、「伝説を生み出すような人材」になるための違いです。
 

新人時代の強みと弱みを認識せよ

 何事も競争で勝つためには、自分の強みと弱みを把握し、強みを十分に発揮して戦うことが重要です。それでは新人時代の強みと弱みとは何でしょうか。まずは弱みから考えてみましょう。

【新人の弱み】
 ・経験がない・能力がない・やり方がわからない・実績がない・人脈がない
 ・お金がない・習慣が身についていない・当たり前基準がない


 他にもまだまだありそうですが、大体このようなことに集約されるのではないでしょうか。でも、少し考えてみてください。そもそもなぜ、これほどまで何もない人を企業は採用するのでしょうか。これが中途採用だったらあり得ないはずです。
 それは、企業が新人の「可能性」に賭けているからに他なりません。つまり企業は新人の弱みなど百も承知で採用しているのです。言い方を換えれば、「そんなことは目をつぶるから、新人の強みを発揮してくれ」と期待しているのです。
 では、いったい新人の強みとは何でしょうか。

【新人の強み】
 ・失敗が許容される・教えてもらいやすい・期待されている・実績で判断されない
 ・失うものがない(少ない)・若さ、体力がある・習慣が身についていない
 ・当たり前基準をゼロから作れる


 こうしてみると、新人の強みは弱みの裏返しであることがわかります。
 経験も能力もないから、失敗が許される。やり方がわからないのが当たり前だから、教えてもらいやすい。実績がないから、実績で判断されない。そして何より重要なのは、習慣が身についていないから、習慣をゼロから身につけることができるということです。
 これらの強みはいつまでも活かせるわけではありません。年を重ね、30代になったりするとそう簡単に失敗が許されるものではありません。いつまでもやり方がわかりませんと言って教えてもらってばかりいたら、やがて「何年仕事をしているんだ」と言われるようになります。実績を残せないまま時間を過ごすと、チャンスはどんどん離れていきます。

 新人時代の強みを武器として戦えるのは3年までです。ビジネス人生の先は長いですが、新人の強みを活かし、最高のスタートを切るための時間は実は短いのです。この間に、「超一流」への階段を上る思考習慣・行動習慣を身につけなければならないのです。
 

当たり前基準を徹底的に高めよ

 辞書で習慣の意味を調べると、「長い間繰り返し行われていて、そうすることが決まりのようになっている事柄」と出てきますが、これはその人にとって、そうすることが当たり前の状態を指しています。この当たり前の基準を、社会人としてどのレベルに設定するかがこれからのビジネスにおける成否を左右します。

 人間の行動の95%が習慣の力によると言われるように、習慣の力は絶大です。例えば、目を見て気持ちよく挨拶をするのが習慣になっている人は、永遠にそうし続けますが、ぼそっと挨拶するのが習慣になっている人は、挨拶のたびに人に不快感を与え続けてしまいます。やっかいなのは、どちらも本人は挨拶していると思っていることです。両者に大きな差があるのは明らかですが、マイナスの習慣が身についてしまったら、きっかけがない限りそれがよくないことなのだとは気づきません。
 逆によい習慣を身につけることができればあとは本当に楽です。いちいち考えなくとも自然に頭も体も動いてしまうからです。事実、「超一流」になる人は皆、自分をプラスに導く思考習慣と行動習慣を身につけています。

 新人時代は社会人経験がないだけに、働き方の基準がないということが特性といえます。基準がないから、初めの働き方がその人の当たり前基準になってしまいます。
 どんな時も120%の力で本気で仕事に向かおうとする人は、そうすることが当たり前になり、少しでも手を抜いて仕事をしようとすることが許せなくなります。
 いつも70%の力で乗り切ろうと考える人はそれが自分の当たり前になり、全力を出すということがどういうことなのか、本気で仕事をやるということがどういうことなのかを知らぬまま時を過ごしていくことになります。
  「伝説の新人」を目指すのであれば、伝説を残すような超一流の人材の思考習慣・行動習慣を学び、自分の当たり前基準を徹底的に高めることが絶対に必要なのです。
 

目指すレベルを明確にイメージせよ

 本章に入る前に、もう一つだけ自分自身に問いかけてほしいことがあります。それはあなたが目指すのはどのレベルなのかということです。
 伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナは生前よくこう語っていたそうです。「2位になるということは敗者のトップになるということ。状況がどうあれ2位や3位じゃ満足できない」
 上位に入賞できればいいと考えている人間と、1位以外はすべて負けだと考えている人間が戦い続ければ、圧倒的な結果の違いが生まれて当然です。
 ビジネスの世界でも、トップ営業マンを名乗る人は溢れるほどいます。優秀な新人と呼ばれる人もたくさんいます。もちろんそれだけでもすごいことです。
 しかし、本気で「伝説」と呼ばれるまでやり遂げたいのなら、覚悟を決めて目標の次元を変えなければなりません。

 プロスポーツをイメージしてください。
 例えば日本のプロ野球選手は12球団で950名ほどいます。その一人一人が学生時代にずば抜けた実績を残してきた選手です。一軍に上がることができず、二軍で練習を積んでいる選手たちも地元に帰れば有名な優秀な選手ばかりなのです。でも、あなたは何人の選手を覚えていますか。あの選手のプレーはすごかったと記憶に残っている人は何人いるでしょうか。ほんの一握りしかいないのではないでしょうか。
 ビジネスの世界でも同じです。会社の同僚の中でトップに立つだけでも素晴らしいことですが、どうせやるならもっと高い目標を掲げたほうがいいと思いませんか。
 会社の中で何年も語り継がれるような人材になったり、業界中の人が注目するような人材になることを目標にしたほうがずっとワクワクするはずです。

 ましてこれからはグローバル化が本格的になっていく時代です。世界との競争の中でイノベーションとなる仕事を残していけば、世界に「伝説」を残すことも夢ではありません。
 プロゴルファーの石川遼選手は、子供の頃からプロゴルファーとして、世界一を決めるマスターズで優勝することを目標にしていたといいます。プロゴルファーになることが夢ではないのです。だからこそ、どんなに脚光を浴びても目標を見失うことなく、向上心をもって成長し続けているのだと思います。

 「伝説の新人」を目指すのならば、プロとして認められるのは当たり前。そこからどれだけ突き抜けられるかが勝負です。あなたはすでにそのフィールドにいるのです。あとはやるしかありません。
 

20代でチャンスをつかみ、突き抜ける人の10の違い。

紫垣樹郎

【伝説を生む10の違い】

① 伝説の新人は、スタートが違う。
② 伝説の新人は、チャンスのつかみ方が違う。
③ 伝説の新人は、当事者意識が違う。
④ 伝説の新人は、目標設定力が違う。
⑤ 伝説の新人は、時間の使い方が違う。
⑥ 伝説の新人は、解釈力が違う。
⑦ 伝説の新人は、好かれ方が違う。
⑧ 伝説の新人は、伝え方が違う。
⑨ 伝説の新人は、スキルの盗み方が違う。
⑩ 伝説の新人は、読書力が違う。

これから学んでいく「伝説を生む10の違い」は、本気で語り継がれる レベルで突き抜けたいという思いのある方に向けてまとめています。一 般的には「そこまでやらなくても」と思われることもありますが、伝説を 残している方々には「そのとおりだ」と共感していただいていることば かりです。心をオープンにして読み進めていただければと思います。

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