第一章
伝説の新人は、スタートが違う。
[まず考えよう]
予選で全力を出し切り、
ポールポジションを獲ったドライバーと、
予選で力を温存し、何台ものマシンの
後からスタートするドライバーでは、
どちらが勝つチャンスが多いだろうか。
慣らし運転不要。エンジン全開でスタートダッシュせよ
これから伝説の新人と呼ばれる人の10の違いについて話を進めていきますが、もしあなたが20代前半で、そのうち一つだけしか伝えることができないとしたら、私は何をおいてもスタートダッシュの重要性を訴えます。スタートダッシュの成功によってもたらされる正の循環は、後から簡単には取り返すことができないほど大きなものだからです。
これまでも中学や高校、大学へ進学した時、同じようなスタートを経験したことがあるかと思いますが、社会人のスタートと学生時代のスタートには決定的な違いがあることをまずは認識しなければなりません。それは、学生時代は同じ学校に入れば誰もが基本的に同じような授業を受けることができ、単位さえ落とさなければ誰もが進級できたのに対し、社会人になるとそうはいかないということです。
どんな会社も価値を生み出すことを追求していますから、より大きな価値を生み出しそうな人に、より大きな仕事を任せ、価値を生み出せない人には、それなりの仕事を任せるしかないという原理が働いているのです。
ですから、社員全員に同じ価値の重さの仕事を振り分けるということは基本的にはないのです。それは新人においても同様です。はじめは誰が価値を生み出しそうかはわかりませんから横一線でスタートになりますが、差が少しでも見え始めると前を走っている新人に、より重要な仕事が与えられるようになるのです。
学校の先生と会社の経営者を比べてみると、もう少しわかりやすいかもしれません。
学校の先生は、教えることが仕事です。ですから、優秀な学生に対しても落ちこぼれの学生に対しても教えるべきことを教え、学生を成長に導こうとします。
しかし、経営者の仕事は教えることではありません。もちろん、社員教育は重要ですが、それは目的ではなく、いい経営をしていくための手段なのです。経営者の仕事は世の中に価値を提供し、利益を上げるべく会社を経営していくことですから、価値をたくさん生み出す人により多くの仕事を任せるようになるのは当然です。落ちこぼれを救うより、優秀な社員にさらに多くの価値を発揮してもらうことで企業を成長に導こうとします。
新人であろうが10年目の社員であろうが、デキる人にはどんどん大きな仕事が集まり、デキない人には重要な仕事が回らないのが普通なのです。
チャンスはぶっちぎった者に集中する
図1をご覧ください。上に向かっている矢印の一つ一つが同期の新人を表すとします。スタート時点ではほぼ横一線の状態です。同期が少なければ、世の中すべての新人と考えても結構です。
これを上司や先輩、あるいはお客様の立場になって見直してみましょう。この状態で新人に何かものを頼むとしたら誰にしようか迷ってしまったり、誰でもいいから頼んでみようとなるはずです。誰がどんな働きをするかがまだわからないからです。
では次に図2をご覧ください。これは誰が見ても突出している新人が一人いる状態です。仮にあなたの姿だとしましょう。あなたは「イキのいい新人」として認知されています。この状態になると、社内で「新人に任せてみようかな」と考える案件が生まれるたびに、まずあなたのことが想起されるようになります。
そこであなたがこれをチャンスと理解し、「ありがとうございます! やります!」というスタンスで臨み、期待に応えることができれば、チャンスは次から次へとあなたに集中し始めます。なぜなら新人がどんな働きをするかは、新人に仕事を頼んだ上司や先輩だけでなく、実はその周りの人も気にかけているからです。組織の中には、常に誰に頼めばいいのだろうかという思いが満ちているのです。
例えば、あなたに仕事を頼んだ先輩が仲間たちと飲みに行ったとします。すると、そこではこんな会話が行われているでしょう。
「今年の新人、誰がいけてるの? お前のところの新人、かなり頑張ってるみたいだけど」
「この前、ちょっと仕事を振ってみたんだけど、かなり優秀だよ。前向きだし、まだまだフォローも必要だけど、学ぼうとする姿勢が強くて頼みやすいよ」
「へぇ〜。じゃあ、俺の案件もちょっとお願いしてみようかな……」
こうしてあなたの仕事ぶりは、自分の仕事を任せられる人を探している先輩や上司の中で次第に広まっていくのです。
このような会話は新人だけを対象に行われているわけではありません。すべてのビジネスの場でこのような情報交換が行われているのです。これは会社の枠を超えても同様です。
「あの仕事、すごくよかったけど、どこの会社にお願いしたの?」
「ああ、あれはA社にお願いしたんだけど、担当のTさんというのがすごい人でね……」
このように、いい仕事をし続ける人はそれが評判となり、該当分野で案件が生まれた時に、常に第一想起されるようになります。第一想起とは「〇〇といえば、誰」のように一番に思い起こされることです。こうしてチャンスをつかみ、さらに経験と実績を積んでいくことで、やがて業界で「伝説」と呼ばれる超一流の人材になっていくのです。
チャンススパイラルにいち早く乗れ
このように次々とやってくるチャンスに乗って上昇する様子を、私たちはチャンススパイラルに乗っていると表現しています。ビジネスで加速度的な成功を遂げる人は皆、このチャンススパイラルに乗って一気に上昇していくのです。
20代の皆さん、特に新人の皆さんにスタートダッシュの重要性を訴えたいのは、このチャンススパイラルに乗るタイミングが若ければ若いほど加速度的に上昇する原理が働くからなのです。
チャンススパイラルに乗って上昇すると、経験すること、付き合う人、世の中を見る視界、クライアントの大きさなど、すべてがそのつどレベルアップしていきます。
すると、耳に入ってくる話も変わってきます。上司と同じ視界でものを見ることができるようになったり、上司が体験してきたことと共通の体験を積むようになると、周囲の人のあなたに対する見方が変わってくるのです。そして、これまで聞けなかった話を聞き始めることで、あなたの視界はますます広がっていくことになります。
30代になって、周りの誰もがそれなりの経験とスキルを積んだ状態で、そこから第一想起されるようなポジションを獲るのは2
0代の時と比べて難しいのが事実です。
20代の時、特に新人時代は誰もが経験も実績も能力もない状態でのスタートですから、ここで頭一つ突き抜けて第一想起されることは3
0代、40代のそれと比べると圧倒的に容易なのです。
スタートの遅れは実力差以上の差になる
実は私は、大学時代にスタートダッシュを怠ったことで大きな失敗をした経験があります。その失敗のおかげで、社会に出たらスタートダッシュが大事なのだと学んでから社会人になることができました。考え方の参考に少々その体験をお話しします。
私は小さな頃から野球が好きで、小学校・中学校・高校までは常にクリーンナップを打つ中心選手として活躍していました。しかし、高校野球の最後の夏の大会、青春の集大成で臨んだはずの予選のなんと1回戦で、一本のヒットも打てずに負けてしまったのです。悔しさと同時にこのままでは終われないと考えた私は、大学であと4年、野球を続けようと決意しました。しかし、野球ばかりしていた私の学力では現役で大学に進学することはできず、一浪の末、試験に合格し大学の野球部に入部することになったのです。
大学の野球部には高校時代に活躍した選手がたくさん集まってきています。私と同期で入部した新人たちの中にも、甲子園で活躍したような選手や甲子園までは行けなかったけれども、すごい実績を残してきた選手がたくさん揃っていました。
私は彼らと競争するには、まずは大学の練習についていき、1年間の浪人生活でなまっている身体の切れを取り戻してからが勝負だと考えていました。
そんな中、何人かの同期の新人はスタートから猛烈な意気込みでチャンスをうかがい、監督や上級生たちに存在をアピールし続けていました。
その時の私は、そんな彼らを見てかっこ悪いと思っていたのです。同じ1年生として一緒に練習をしていますから、お互いの技術レベルはわかります。多少の差があっても追い抜けないレベルではない。最後は実力で決まるはずだ。まずは身体の切れを取り戻してそこからが勝負だと思っていたのです。
しかし、それは甘い考えでした。夏のある日、二軍の紅白戦が行われることになりました。それまで紅白戦に新人が出場したことはありません。新人たちはグラウンドの脇で筋トレをしたり、ボール拾いをいつも通りしていたのです。でも、その日は違いました。同期の新人の中の一人が急に呼ばれ、代打に出すから準備をしろと言われたのです。
声をかけられたのは必死にチャンスをうかがい、アピールし続けていた選手の一人でした。今では切っても切れない親友ですが、私はその時は激しい嫉妬とともに、凡打で終わってくれと心の中で願ったのです。しかし、彼は見事にヒットを打ってのけました。明らかに二十数人の新人の中でチャンスをつかみ、ものにした第一号でした。
野球でヒットを打てるのはうまい選手でもせいぜい3打席に1回ですから、今になって思えば、まさにチャンスに対する準備をし続けた結果だったのでしょう。それを見て私を含め、新人たちは皆強い刺激を受け、「次は俺が」と心に期していました。当時の私たちは、チャンスがチャンスをものにした人に集中するということを知らなかったのです。
翌日、再び彼は代打で起用されました。今度は凡打に終わりましたが、最初のヒットの印象が強かったからでしょうか、その後、続けて代打で起用されるようになったのです。もちろん、毎回ヒットを打つことはできませんが、何回か打席に立つと、またヒットを打ったりします。次第に彼が代打でヒットを打っても誰も驚かなくなりました。
秋も近づいてきた頃、とうとう彼はスターティングメンバーとして名前を連ねるようになりました。私はといえば、相変わらずグラウンドの脇で走り込みをしています。
ステージが上がった彼は、試合のたびに3回か4回打席が回ってきて、コツコツとヒットを重ねていきました。そのうち上級生だけが集まって行うミーティングにも参加するようになり、やがて一軍としてベンチ入りするようになりました。同じ新人として同じグラウンドに立ちながら、見ている世界はまったく違うものになっていってしまったのです。
私は決定的な差をつけられたことを感じ、スタートダッシュを怠った自分の愚かさを嘆きました。私はチャンスを引き寄せることができぬまま、十分な打席に立つことなく新人時代を過ごしていくことになってしまったのです
手を挙げてバッターボックスに立て
もしかしたらそんなことは考えすぎで、ただ単に私が下手くそだったのかもしれません。しかし、実績も経験もない新人がチャンスをつかむためにスタートダッシュをかけ、チャンススパイラルに乗ってあっという間に一軍に駆け上がっていく様子を唇を噛んで見ているしかなかった自分がいたのは事実なのです。
今振り返ると、学生時代に運動部という競争の世界でスタートの失敗を体験したことは、私の人生にとって大きな学びでした。そして大学での4年間を終え、社会人としてスタートを切る際、同じ失敗だけは絶対にしないと私は心に決めていました。
スタートダッシュを心に決めてリクルートでの社会人生活を始めた私は、あることに驚きました。それは会社にはチャンスがたくさん落ちているにもかかわらず、それを拾おうとする人が意外に少ないという現実でした。一人一人が忙しい会社であったからかもしれませんが、新たな案件が発生し誰かがそれをやらねばならない状態になっている時、自ら手を挙げる人が少なかったのです。少なくとも私はそう感じました。
先輩たちはすでに自分の目標数字に追われている状態です。かといって経験もなく知識も能力も身についていない新人たちはなかなか手を挙げない。
私はここぞとばかりに手を挙げ続けました。手を挙げてもなかなかバッターボックスに立てない世界で4年間を過ごしてきた私にとっては、手を挙げるだけで何度でもバッターボックスに立てる会社員の生活は本当に驚きだったのです。
しかも、失敗しても次がある。もちろん新人だから多少の失敗については目をつぶってもらえていたのですが、ヒットを打てなければ、次にバッターボックスに立つチャンスが大きく遠のいてしまう環境に比べると、はるかにチャンスがつかみやすい環境でした。
先輩たちが敬遠する要望の多いクライアントの仕事、単純作業ばかりが多い業務、部会の幹事、課のニュースレターの発行、弁当の買い出し、飲み会のお店探し……。そうした皆が敬遠しがちな業務のすべてが私にはチャンスに見えていました。
手を挙げ続けた私は、業務の多さに何度もおぼれそうになりました。しかし、全力で走り続けなければ追いつかない大量の業務に忙殺される状態が続くと、少しずつコツを覚えたり、先輩がやり方を教えてくれたりして、できることもキャパシティも増えていくのを実感することができたのです。振り返ると、あの時、手を挙げ続けたことが私にとってのチャンススパイラルの入り口だったのだと思います。
常に全力を出し切ることを習慣づけよ
ここまでは、新人時代のスタートダッシュの重要性をチャンススパイラルに乗るためという切り口でお伝えしてきました。しかし、本書でお伝えしたいのは、スタートダッシュで仲間を出し抜けということではありません。
スタートダッシュをすることで得られる大切なことを身につけよ、ということなのです。それは、働き方に関して当たり前基準がない状態から全力でダッシュし続けることで、それがあなたにとっての働き方の当たり前基準となり、習慣となっていくということです。
頼まれごとがあったら喜んで引き受けるのが当たり前、目の前のチャンスはすぐに手を挙げてつかむのが当たり前、仕事に対しては絶対に手を抜かず全力で取り組むのが当たり前、人が嫌がることは買って出るのが当たり前、仕事をくれた方の期待を超える行動を起こすのが当たり前……と、当たり前基準を高いレベルで設定できれば、あとは習慣の力で放っておいても成長は加速していきます。
しかし、新人時代にスタートダッシュをかけずに、マイペースで社会人生活を始めてしまうと、それがその人にとっての当たり前基準となってしまいます。全力を出し続けるのが当たり前の人と、自分なりのペースでやっていくことが当たり前の人。両者の当たり前基準の差は時がたつにつれ、差を埋めることができないほどの実力の違いを生み出します。
でも、残念ながら新人時代にこの重要性に気づく人は少ないのが現実です。それは、実力の向上と評価の向上には時間差があるからなのです。日本企業の多くは、新人の初任給は全員同額でしばらくは差をつけたりはしません。全力の人もマイペースの人もしばらくは同じ金額をもらい続けます。
働き方の違いは、やがて実力の差を生み出し始めますが、それが結果として表れるのはさらに先。そして積み上げた結果が評価に反映されるのはさらにその先です。
その間は、給料もポジションもあまり変動しませんからマイペースでいても問題を感じたりしないのです。そこが落とし穴です。
しかし、1年たち、2年たつと、全力で走り続けてきた誰かが突然、会社の重要な案件に加わるようになったり、同期で初めて昇格や昇給をし始めます。
多くの新人はその時初めて差をつけられていたことに気づきます。でも、その時には全力で走り続けてきた新人はすでにチャンススパイラルに乗ってステージを上げていますから、簡単に追いつくことはできなくなっているのです。
ましてマイペースで働くことが当たり前として習慣づいてしまっていたら、そこから全力で走り続けることが当たり前と感じるように習慣を変えていくのは大変です。
本気で成功したいなら3年間は徹底的に働け
昨今、世の中ではワークライフバランスの重要性が叫ばれています。仕事の時間とプライベートの時間をバランスよく充実させなければ豊かな人生とはいえない、という考え方です。こうした考え方が合う人もいるでしょう。しかし、あなたがもし「伝説の新人」を目指すのなら、この考え方を鵜呑みにしてはいけません。
「超一流」と呼ばれる人の決定的な共通点は、その誰もが20代のある時期、徹底的に仕事に打ち込んでいたということだからです。
もちろんその間、まったく遊んでいなかったわけではありません。逆に遊ぶときは思いっ切り遊んでいる人が多いくらいです。でも、遊びはあくまで息抜きです。遊びと仕事を比べたら、圧倒的に仕事に重きを置いているワークライフアンバランス状態。会社での業務が終わってからも、興味のある本を読んだり、会うべき人に会ったりと、生活する上での意識のほとんどを自分がフォーカスしていることに費やしている人ばかりなのです。
もっといえば、オンとオフの精神的な境目がない状態ともいえるでしょう。これをワークライフインテグレーションといいますが、好きなことややりたいことにオンもオフもなく一人の人間として没頭し、楽しんでいる状態です。
作詞家でAKB48をはじめ数々の企画を生み出しているプロデューサーの秋元康さんは「一日19時間が仕事」とインタビューで答えています。「どこからが仕事でどこからが仕事でないかという境目がなく、食事をしていても常に何かネタになることはないかと考えたり、脚本に使えないかと考えたりしていて、結局寝ている時間以外はすべて仕事に関連してしまう」と話しています。
『天才! 成功する人々の法則』を著したマルコム・グラッドウェルは、アイスホッケー選手、サッカー選手、バイオリニスト、ピアニスト、作曲家、小説家など、様々な分野のプロで世界的なレベルに達した人には、例外なく1万時間の訓練期間があったことを指摘し、それを「1万時間の法則」と呼んでいます。
ビートルズも下積み時代に、1日8時間以上、約1200回ものライブをこなしていました。ビル・ゲイツは中学2年から大学中退まで1万時間以上、プログラムの開発にのめり込んでいました。1万時間とは、一日3時間で約10年。6時間で5年。10時間で3年です。こう考えると、20代で頭角を現し始める人間が出てくるのが入社して3年たったころだというのも頷けます。伝説的な仕事を残してきた人が、「20代は徹底的に働け」と口にするのは、それを感覚的に覚えているからなのでしょう。
ある若手社員にこうした事実を伝えると、彼は「平日は仕事に集中していますから、土日は仕事のことは一切忘れるようにしたいです」と自分のスタイルを主張してきました。
もちろん、普通に優秀というレベルでいいのならそれでも結構です。平日の業務時間に求められていることにしっかり応えているのなら、会社としても何ら問題のない優秀な社員といえるでしょう。でも、そんなレベルで「伝説」を生み出す「超一流」になれるほど世の中は甘くありません。世の中で第一人者と呼ばれるような人は、皆、その分野でNO.1のポジションを獲るまでそれに没頭しているのです。
考えてみてください。これから世界の頂点を目指す同じ20代の石川遼選手が「土日は休みですから、ゴルフのことを一切考えないようにしています」などと言うでしょうか?
イチロー選手は小学校3年から中学3年までの7年間、一年間に363日バッティングセンターに通い続け、毎日200?250球の打撃練習を積んでいたといいます。打撃練習をしなかった2日はバッティングセンターが休業した2日だけ。
「超一流」を目指すということは、四六時中、目標に向かって突き進んでいなければつかむことのできない夢を追いかけているということなのです。
それはビジネスの世界でも同じです。周りと同じことをやっていて、いつの間にか頂点に立っていたなんてことは絶対に起こらないのです。
サイバーエージェントの藤田晋さんも新人時代(インテリジェンス時代)は猛烈な働き方をしていたそうです。「21世紀を代表する会社をつくる」という目標を持っていた藤田さんは毎日終電ギリギリまで働くのはもちろん、土日も、夏休みもなく働き続け、食事は社内にあった自動販売機のパンばかり。仕事に夢中になっていて食事したこと自体忘れていることがあるほど仕事にハマっていたといいます。その結果、1年目にして粗利益額5000万円という数字を残し、すごい新人が入ってきたと注目を集めたそうです。
決して長時間労働を勧めているわけでもありませんし、休みを取るなと言っているわけでもありません。仕事は時間の長さで測られるものではありません。
ただ、伝説的な結果を残している人は皆、それを苦痛と考えることなく目標に向かって没頭するほど打ち込んでいるという事実に目を向けてほしいのです。
もしあなたが本気で「伝説の新人」を目指すなら、まず、最低3年間は全力で駆け抜けてみてください。すると、それが当たり前のことになり、全力を出すことに苦しさを感じるようなことはなくなります。「慣性の法則」が人生でも働いているのです。止まっているものを動かす時は、外から力を加えていかなければなりませんが、それが一度高速で動き始めればあとは慣性が働き、小さなエネルギーでも高速で動き続けます。
初めの3年間を全力で駆け抜けたら、あとは習慣の力で成長が加速することを必ず実感できます。むしろ、その世界で成功する感覚をつかみ始めることにより、仕事が楽しくなってくるでしょう。オフの充実は、超一流の実績と実力が備わってからで十分です。そうしないと逆に大変なことになってしまいます。やりたいことを高いレベルでできる力を身につければ、やりたい仕事をやり続ける人生を送ることができます。それこそが真の意味での自由だと思います。しかし、20代で力をつけることを怠り、与えられたことだけをやるような生活をしていると、その後のビジネス人生のすべてが仕事に追われるものになってしまいます。
20代で全力を出したほうが、結果的に楽しい人生を送れるようになるのです。
仕事が楽しいと人生が楽しい
社会に出ると、時々「どうしてそんなに頑張れるの?」と聞きたくなるほど頑張っている人に出会うことがあるでしょう。しかし、実際に話をしてみると、その人はその働き方が普通だと思っていることが多いのです。それは仕事を始めた早い時期に常に全力を出すという習慣が身についてしまっているからなのです。
常に全力を出していては辛いのでは? と思うかもしれません。でも、彼らはそうは感じていません。彼らにとってはそれがそもそも当たり前ですし、常に全力で仕事に向かっていますから、仕事の生産性もクオリティも高く、社内からもお客様からも喜ばれたりするので仕事がどんどん楽しくなってしまうのです。
一生懸命に、しかも楽しそうに仕事をしてくれてそのクオリティも高いとなれば、一度仕事をした人はもう一度仕事を依頼したいと思いますし、評判になるのは当然です。すべてが好循環を生んでいるのです。
人は楽しいと感じることに、エネルギーが自然に向かっていきます。どんな時に楽しいと感じるかというと、できなかったことができるようになったり、人から褒められたり感謝されたり、仲間が自分を認めてくれたりする時です。
仕事でこの楽しさを味わうためには、全力で仕事に集中し、成長の喜びや人に喜ばれる快感を体験することです。それは本気でやったからこそ得られる喜びや快感であり、本気でやっていなければ味わうことのできないものなのです。
これを一度味わうことができれば、あとはもう一度味わいたいという気持ちがエネルギーとなって次の仕事につながっていきます。こうして社会人生活の大部分を占める仕事の時間が楽しくなると、人生そのものが楽しくなっていきます。
そのためには、まず全力でスタートを切ることが重要なのです。
第一章 〜伝説の新人は、スタートが違う〜 まとめ
● エンジン全開でスタートダッシュせよ
● チャンススパイラルにいち早く乗れ
● スタートの遅れは、実力差以上になる
● 手を挙げてバッターボックスに立て
● 全力を出し切ることを習慣づけよ
● 本気で成功したいなら3年間は徹底的に働け
● 仕事が楽しいと人生が楽しい
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