集英社ビジネス書

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第一章

借金まみれだった僕が人生をリセットできた理由

1 こんなに稼いでいるのに、どうしていつもお金がないんだろう?

 昔の僕は、なぜかいつもお金がありませんでした。
 仕事をせずに遊んでいたから貧乏だったわけではありません。一生懸命仕事をして、稼いでるはずなのに、なぜか貧乏なんです。
 仕事仲間と銀座や六本木でパーッとお酒を飲んだ後、財布を見たら小銭しか残っていなくて、タクシーに乗れずに夜中ひとりでトボトボ歩いて帰ったこともあります。お金がなくて、食パン一斤で一週間過ごしたこともあります。
 こんな貧乏生活を告白すると信じてもらえないかもしれませんが、今から二十五年前の大学生当時から、僕には一千万円近い年収があったんです。「学生クリエイター募集」という記事を雑誌で目にし、企画を作って応募したら採用されたことがきっかけで、僕は学生ながらマーケティング活動にかかわるようになり、二十代にして高額な報酬をもらうようになっていました。大学卒業後は、憧れだった放送作家になり、あちこちのテレビ局でヒット番組を作っています。
 若いころから華々しい業界に身を置いてめまぐるしく働き、少なくない年収に恵まれていた僕。なのに、なぜか財布はスッカラカン。まったくお金が手元に残らない!
 しかも、気が付いたら一千万もの借金を背負っていました。僕は、お金に振り回されていたんです。
 どんどん入ってくるお金をじゃんじゃん使う。忙しく働き、お金を稼ぎ、ストレス解消にお金を浪費する。その繰り返しのなかで、いつの間にか僕はまぎれもない「貧乏」になっていました。
 人一倍働いているはずなのに、なんで!?

 人は稼いでいる額にかかわらず、いつでも貧乏になります。
 貧乏なのは、お金のコントロールができていないから。
 若いころの僕が、まさしくそれでした。しかし僕は、あるときからお金に振り回される人生をきっぱりやめました。お金の悩みから解放された今、僕の人生はガラリと変わり、いい変化ばかりが起きています。

 この本では、お金でさんざん苦労した僕が編み出した「お金のお片づけ」の考え方を最大限に生かす手帳術をお伝えします。同じ悩みを持つひとりでも多くの人と、僕の気付きを共有できたら、これほどうれしいことはありません。

2 だらしなかった男が、たった三カ月で借金を返済!

 僕は長い間、とてもだらしのない人間でした。部屋はいつも散らかっていて、デスクにはいらないものが山積み。時間にも、お金の使い方にもルーズでした。
 かつて僕は「ストレス解消」を名目に、毎晩ひとりでバーに通っていました。ミーティングや接待で豪華なディナーを食べた後でも、夜十一時ごろから朝三時ごろまで必ず飲むんです。バーの女性や飲み仲間に「ごはんが食べたい」と言われると、「じゃあ寿司でも行く?」なんて言ってしまい、お腹一杯なのにまた食べに行く……。完全なムダづかいです。また、今思うとバカみたいですが、キャバクラにどっぷりハマっていた時期もあります。気が付くと半年で三百万円もつぎ込んでいて、後から「うわ、こんなに払っていたのか!」と茫然としたものです。

 当時の僕は、お酒を飲むのも、浪費するのも、部屋を片づけられないのも「忙しいから仕方がない」と思っていました。でも本当は「仕方がない」なんてこと、世の中にはめったにないのです。たいていのことは自分の気持ち次第でどうにかなるもの。「仕方がない」は、だらしなさを正当化するいいわけにすぎません。もしも、あなたが「仕方がない」とよく口にしてしまうなら、まずはその口癖をやめてみてください。自分がその言葉にどれほど甘えているかがわかるはずです。
 だらしない自分に飽き飽きした僕は、「仕方がない」をやめてスッキリしようと一大決心。まずは借金を全額返済することから始めました。といってもここからが大変。なにしろ僕は自分にいくら借金があるのかさえ、把握できていなかったのです!
 借金総額を明らかにし、複数の口座にバラバラになっていた預金をすべて確認して、手元にいくらあるか理解するのに一カ月もかかってしまいました。消費者金融などからの借金総額は一千万円。毎月返済していたのに、金利ばかり払い続けて元本はほとんど減っていませんでした。預金を見直すと、少し頑張れば借金をすべて返済できることが判明。その日から金銭管理を徹底し、遊びも控えて倹約を心がけました。すると、三カ月で借金を全額返済することができたのです。

 借金がなくなった瞬間、それまでどんなときも僕から離れなかったもやもやした不安や、ざわざわと落ち着かない気分がウソのように消えました。その感動はとても言葉にできないくらい。借金を返して、ずいぶん生きやすくなりました。その後、お金との付き合い方を見直すと、今度はいいことばかりが起きるようになってきたのです。

3 自分のお金の使い方を調べてみた

 借金を全額返済した時点で僕の貯金は全部なくなり、まるでリセットボタンを押したように、プラスもマイナスもゼロの状態になりました。
 「よし、ここからは全部プラスにしていこう!」と思った僕は、徹底的に自分のお金の使い方を洗い直してみることにしました。

 いちばん簡単なやりかたとして思い付いたのが、レシートや領収書を集めるという単純な方法。A4用紙一枚に、一日分のレシートや領収書をすべて貼り付けていきます。こうすることで、自分の一日の出費をくまなく見て確かめられるようにしたのです。
 初めのうちは、一日に集まるレシートの膨大さにあっけにとられました。意識しないで使っている細かいお金のなんと多いことか。たとえばコンビニに立ち寄って、なんとなく買ってしまったお菓子。「これって、本当に必要だったのかな?」と、一日の終わりにレシートを眺めると、考えざるを得ません。そう、たぶん、その日のコンビニのアイスはムダでした。本当に食べたかったのか、お腹が減っていたのかと改めて考えると、そうでもない。そんなに欲しくもないのに「まあいいか」、と買ってしまったアイスなんです。
 レシートを紙に貼っていると、「この出費には意味があったな」とか「これはムダづかいだったな」と、必ず考えます。お金の価値に敏感になります。
 一カ月もこれを続けていれば、一日に自分がどのくらいお金を使っているのかがわかってくるでしょう。だいたいどのくらいの金額を自分が必要としているのか。また、どのくらいのムダづかいをしていて、どのくらいなら節約できそうか。そういったことが見えてくるんです。
 「まあいいか」と、考えもなく出費していたムダづかいが真っ先になくなっていくので、一日に集まるレシートの枚数も次第に減って、スッキリしていきます。自分の出費が明確になることで、結果的にお金が貯まっていくのです。
 僕の場合、二〜三週間ですぐに効果が表れて、「あれ?いつもより余裕があるな」と感じられるようになり、結果を手帳に記録することも始めました。

 一日の終わりに、その日使ったお金を振り返る。そうすることで、自分のお金の使い方や流れがわかるようになります。お金と向き合い、スッキリできるようになるこの方法を、僕は「お金のお片づけ」と呼んでいます。

4 「お金のお片づけ」効果で、何もかもがうまくいくように!

 「お金のお片づけ」を習慣化したころから、僕の生活は一変しました。
 まず、部屋がいつも整理整頓された、きれいな状態になりました。集中力がアップして、仕事に没頭できる時間が増え、仕事の質も量も向上しました。当然、収入も増加。これまで借金に苦しんでいたのがウソのように、お金もどんどん貯まり始めました。
 なぜこんなにいいことばかりが起きるのか?

 不思議に思うかもしれませんが、お金を片づければ、部屋も一緒に片づきます。逆に、部屋をきれいにしていると、お金も上手に片づきます。仕事がうまく回り始めることも、貯金も、「お金のお片づけ」と無関係ではありません。すべてがリンクしているんです。
 毎日、習慣的にお金を片づけていると、「すみずみまでちゃんとしよう」という意識が生まれます。その動きは、人生全体に影響していきます。
 ゴミを増やしたくなくなるから、ゴミになるようなものは買わなくなる。
 着なかった服を処分すれば、「この買い物は失敗だったな」と反省でき、ムダづかいがなくなる。
 冷蔵庫をきれいにすれば、ムダに買い込む食材も減る。
 ムダづかいがなくなると、どんどん部屋は片づいていきます。そして、ムダづかいが減れば、当然、貯金は増えていきます。

 部屋にあるものはすべて、もともとはお金で買ったもの。どこに何があるかわからない散らかった状態は、自分の財産が把握できていないのとまったく同じです。自分が買ったものをきちんと管理し、「買う」という行為を自分にわかりやすくするためにも、整理整頓が大事です。目に見えるものをちゃんときれいにしておけば、お金も見えてくるんです。だから、とにかく身の周りをきれいにしておくことです。
 整理された環境にいれば、集中力も自然と高まり、仕事の効率もアップします。お金を片づけ、ムダを省くことが習慣になると、自然と時間の節約までできるようになり、仕事に没頭する時間も増えていきます。

 お金を片づける習慣は、好影響を人生のすべてに及ぼすのです。

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